「クラスの子がすぐ戦いごっこを始めるから困る・・・。」
「戦いごっこって止めるべきなのか、見守るべきなのか・・・。」
そんな声を新人保育士さんやお母さん方から聞くことがあります。
確かに、戦いごっこってケンカやケガにすぐつながるし、見ている方もハラハラしてしまうし、大人としてはやめてほしいですよね。
でも子どもたちの楽しそうな様子を見ていると止めるべきなのか・・・と迷ってしまう保育士さんも多いのでは?
また、止めてもすぐにまた始めてしまうし・・・と困っていませんか?
子どもが戦いごっこをするのはいくつかの理由があります。
保育園で戦いごっこがたくさん起きているなら、もしかしたらその他の部分に見直すべきところがあるかもしれません。
戦いごっこはなぜ起こるのか?
戦いごっこは止めるべきなのか?
じっくり解説していきます。

子どもの行動をよく観察すれば理由が見えてくるよ!
一緒に探ってみよう!
※本記事は保育士さん向けに書かれていますが、子どもの戦いごっこに困っているお母さんも読んでいただければ新しい発見があると思います。

なぜ子どもは戦いごっこをするのか?

子どもが戦いごっこをする大きな理由は下記の2つです。
- その場で他にやることが見つけられない
- 戦いごっこが子どもにとって魅力的
どうですか?
あなたの保育園で思い当たりますか?
一つずつ解説していきましょう。
遊びが見つけられない
あなたのクラスで、戦いごっこばかりしている子を思い出してみてください。
どんな子ですか?
遊びへの集中力がなかったり、友だちとの関係がうまくいかない子が多いのではないでしょうか?
もしそういった子だった場合、今その場で用意されている遊びの中から楽しい遊びが見つけられず、その結果戦いごっこをしているのでしょう。
戦いごっこは、TVなどのヒーローを共通イメージとして友だちと簡単にやり取りが成立しますし、刺激が強いです。
何より再現遊びとしても簡単なので、やることがない子は戦いごっこを始めがちです。
試しに戦いごっこをする子にスマホを渡したらどうでしょう?
戦いごっこなどすぐにやめてスマホに夢中になるはずです。
スマホは戦いごっこより簡単でより刺激が強い遊びですからね。
※乳幼児のスマホ利用は大きな害があるので、保育園では絶対にやめましょう。

つまり、戦いごっこより魅力ある遊びを提供できればいいのです。
私は今までいくつかの園で働いてきましたが、戦いごっこが多くなる園は子どもの遊びが制限されているところが多いです。
「自由遊び」という時間にも関わらず、子どもが選択できる遊びが十分になく、その結果遊びが見つけられない子が戦いごっこを始めるのです。
あなたの園ではどうですか?
子どもが遊びを選べる環境は十分ですか?
戦いごっこをやめさせようとするのではなく、他の遊びを十分提供できれば自然と戦いごっこの数は減っていくでしょう。
一度自分のクラスの、戦いごっこがよく起きる時の環境を見直してみてください。
ちなみに、この場合の戦いごっこはやめるよう注意してもすぐ再発します。
なぜならその子はやることが他にないのですから。
大人だって、なんにもやることのない暇な時間に長くは耐えられませんよね?
戦いごっこは友だちとイメージが共有しやすい
ある研究によれば、なんと子どもの戦いごっこは平安時代からあったのではないかと言われています。
(参考文献:日本における子どもの戦いごっこ遊びの変遷、峯 克政 柴 崎正 行、2,004)
古くから愛される戦いごっこ、なぜそんなにも子どもの心を惹きつけるのでしょう?
シンプルに言えば、戦いごっこはどんな子どもでも簡単に楽しめるのです。
大体の場合仮面ライダーや〇〇レンジャーなどTVで見た共通のイメージがしっかり子どもの中にあるので、簡単に再現して遊べます。
友だちも全く同じものを知っているので、「変身!!」といえば「仮面ライダーになったな」と簡単にイメージ共有ができるのです。
また、子どもはTVで観たヒーローに強い憧れをいだきます。
そんなヒーローのマネをするのはとても刺激的で楽しいのですね。
イメージでヒーローになりきり、体を動かして遊ぶのはとても楽しい遊びです。
特に道具も必要ありませんし、やることがなければ戦いごっこを始める子が多いのは当然のことなのです。
では、子どもがそんなに楽しい戦いごっこはとめるべきなのでしょうか?
でもそのままにしておけばケガをするし・・・。
悩ましいですね。
次の章では戦いごっこで育つ力を見ていきましょう。
戦いごっこで育つ力

戦いごっこはマイナスの面が注目されがちですが、もちろんその中で育つ力もたくさんあります。
代表的なものとしては、
- ヒーローになりきる想像力
- ヒーローになるための道具を作る創造力
- 友だちと役割や遊びの流れを話し合う協調性
- 相手の気持ちを感じる共感性
- 力を手加減するための身体能力
などがあげられるでしょう。
ままごとなどの他のごっこ遊びと似ていますね。
戦いごっこは相手がいなければ基本的に成立しません。
そのため、友だちに対する手加減や役割を話し合う力などは遊びの中で自然に身についていきます。
自分だけがなりたいヒーローになって、思いっきり友だちを叩きまくれば遊びが成立しなくなりますからね。
また、戦いごっこは遊びが簡単に成立するので、遊びに入りやすいという利点もあります。
他のごっこ遊びに比べ、誰とでも遊ぶことができ、その中で様々なことを学んでいけるのは大きなメリットですね。
では、いわゆる気になる子たちがしている戦いごっこはそんなにいいものなのでしょうか?
友だちとストーリーを追っているようにも見えず、友だちを一方的に叩きまくっていることも多いですよね?
気になる子の中には友だちの気持ちがわかりづらく、自分のイメージだけで相手を攻撃していることもあります。
相手が嫌がっているかどうか見極め、嫌がっている場合わかりやすく伝えてあげましょう。
戦いごっこを止めるべき時、見守るべき時

ついつい止めたくなる戦いごっこですが、子どもたちが自発的に楽しんでいる遊びをすぐに止めてしまうのは考えものです。
子どもたちがその遊びの中で成長していることもしっかり認識し、できれば見守ってあげましょう。
しかし、保育園は集団で他人の子どもを預かる場です。
止めるべきときと見守るべき時を見極めましょう。
子どもがケガをしそうな時は止める
これは当然ですね。
自分の子どもなら、”ケガも経験”という考えはいいでしょう。
私個人としてはそういった考え方には賛成です。
しかし、保育園は子どもを安全に預かる場です。
あなたに子どもをケガさせてもいいと判断する権利はありません。
保育のプロとして、預かっている他人の子どもは、朝受け取った状態で返すことは基本です。
環境的に周りに危ないものがある、危ないものを武器にしているなどの時は理由を説明し止めましょう。
それでも、子どもが自発的に楽しんでいる遊びです。
頭ごなしに「やめなさい」ではなく、理由を話して「悪いけど今はやめようね」と声をかけていきましょう。
また、やることがなくて戦いごっこをしてしまっている子の場合、他の遊びを用意して誘ってあげましょう。
止めるだけではすぐまた始めてしまいます。
スペースが確保でき、他の子の遊びを壊さない時は見守る
戦いごっこをしている子達のスペースが十分確保できていて、危険がない場合は見守りましょう。
戦いごっこも立派な遊びです。
子どもはあらゆる遊びの中で成長していきます。
その子が今している戦いごっこの中でどんな風に遊んでいるのか?
友だちとの関係はどうか?などしっかり観察しながら見守ってあげましょう。
相手を強く叩きすぎた時、相手の顔が楽しくなさそうなときなど必要に応じて保育者が入り、相手の気持を代弁していくと、子ども同士力を調整して遊べるようになっていきます。
しかし、危険がなくても、狭い室内など他の子の遊びを邪魔してしまう時は止めるべきかもしれません。
戦いごっこは大きな動きや声で盛り上がっているはずです。
その状態で室内を走り回れば、他の静かな遊びに集中しようとしている子の邪魔になってしまいます。
保育園は集団の場ですから、すべての子どもの遊びが保証される必要があります。
できれば、戦いごっこをする子と静かに遊ぶ子は場所を分けてあげたほうが、お互い遊びに集中できるでしょう。
戦いごっこがマンネリ化している時は遊びに加わる
戦いごっこをしている子達は、本当に楽しそうなのかしっかり見極めましょう。
もしかすると、同じことを繰り返しているだけで、あまり楽しさが広がっていない可能性もあります。
戦いごっこは入り口は入りやすい遊びですが、発展させていこうと思うと友だちとイメージを共有したり、ストーリーを考え話し合ったりと高度な人間関係や創造力が求められます。
もし子どもたちの遊びがマンネリ化してしまって楽しくなさそうな時は、保育者も思い切って遊びに加わってみましょう。
保育者が入ることで遊びに展開ができ、子どもたちも楽しみ方を学んでいくでしょう。
次の章では、どんな風に戦いごっこを保育園で実践していけばいいのか見ていきます。
保育に戦いごっこを取り入れるには?

保育の中に戦いごっこを取り入れていくことは十分に可能です。
子どもにしっかりとした環境を用意できれば、戦いごっこを入り口に遊びはどんどん広がっていくはずです。
その実践方法を見ていきましょう。
戦いごっこの保育実践記録
戦いごっこについて文献などを調べているときに、とても面白い実践記録を見つけたので紹介します。
内容としては、10年のキャリアがある幼稚園の先生で、戦いごっこを止めるのでなく、遊びに入ってどう展開していくか?と試行錯誤した実践記録です。
子どもたちはTVのナルトごっこに夢中になっているが、どうも遊びがマンネリ化している。
そこで、先生が遊びに入って少しずつ子どもを導いて行くという姿が生き生きと描かれています。
少し長い記録になりますが、戦いごっこで悩んでいる方はぜひ読んでみてください。
考え方が変わるはずです。
こちらのページからPDFで読むことができます。
一部引用しておきますので、下の引用を読んで興味持った方はぜひ読んでみてくださいね。
実践は研究記録の一部ですから、実践の部分だけ読んでも大丈夫です。
④ 子 どもがナル トの イメージにこだわる段階 での遊び:か まわず楽 しい遊 び
出典:ヒ ー ロ ー ご っ こ 遊 び 実 践 と 集 団 づ く り、浜谷 直人 江藤 咲愛、2016
を仕掛 ける
子 どもたちは、テレビに強 く影響 されてい るので、先 生の繰 り出す技 を見 て、
「エー、違 うよ、そんな技 はナル トには出てこないね」とい う言葉が飛び交 うこ
とになる。
子 どもたちは、「先生 のナル トは、ほんとのナル トで はない」と否定する。
それに対 して言 い訳す る とか、 めげることな く、ナ ル トの イメー ジにあ った
ものや、近 いこ ともしなが ら、 自分 な りに勝手 に忍者 をイメー ジして、ナル ト
とは関係 ない一般的 な忍者の技 も平気 で使 う。そ うや って、子 どもたち を相 手
に しなが ら戦 いをす るイメージで遊 びを続 ける。
保育者がフィールドを用意する
保育者が戦いごっこの場を作ってあげるのも一つの方法です。
私が以前働いていた園で、戦いごっこを所構わず始めてしまう幼児さんがいて困っていました。
その時に主任が「戦い部」という遊びをはじめました。
ホールの一部を「戦い部」の場所として、そこに戦いごっこをしたい子達を集めて気持ちを満たしてあげたのです。
「戦い部」では新聞紙を丸めた剣をそれぞれが作り、”お尻だけ叩いていい”というルールで行われていました。
子どもたちはお互いのお尻を叩こうと夢中になって遊んでいました。
遊んでいくうちに子どもたちの中で”お尻を叩かれたら負け”というルールに変わっていき、スポーツチャンバラのように楽しんでいました。
もちろんトラブルもありましたが、「なんでそんなに強く叩くの!」という風に自分たちで話し合っていたのです。
また、嫌になった子は遊びから抜けて部屋に戻ればいいので、「戦い部」では参加している子はみんな自分でやりたくてやっていました。
途中から武器を飾り付けたり、ベルトを作ったり、自分たちの思うかっこいい姿に変身しようと色々工夫していました。
「戦い部」は数週間の間続いていましたが、日を追うごとに遊びが充実していっていました。
大人がルールを決めることが必ずしも正解ではありませんが、保育園という場で安全を確保しつつ子どもの気持ちを満たす方法としては、一つの手段ではないでしょうか。
人形などの代用品を用意する
雨の日など、どうしても広いスペースが確保できない時は人形を用意してみるのもいいでしょう。
自分たちの体で戦いごっこをする代わりに、ヒーローの人形を使って戦いごっこをして遊ぶのです。
できれば、既製品のヒーロー人形ではなく、人形を廃材で作るなど製作遊びとも結びつけてあげるとより充実した遊びとなっていくでしょう。
もちろんこれだけで気持ちが満たされるわけではありませんが、スペースを用意してあげられない時は人形で気持ちを満たしてあげることも一つの手段です。
止めるばかりでなく、どうやって子どもの気持ちを満たしてあげられるか?と言う視点で考えられると、よりステキな保育となっていきます。
まとめ
保育者として、戦いごっこはとめるべきか?
答えは、できれば見守ってあげましょう。
戦いごっこの中でも子どもたちはしっかり成長しています。
友だちとの関係を調整する人間関係や、遊びに必要なことを考える創造力などがついていきます。
しかし、保育園は集団の場です。
子どもがケガをしそうな時、他の子の遊びを壊している時は止めましょう。
できればただ止めるのでなく、遊びの見つからない子には遊びを提供し、戦いごっこをやりたがっている子にはできる時に思う存分気持ちを満たせる場を用意してあげましょう。
戦いごっこというとどうしてもネガティブに捉えがちですが、その中の子どもの様子をしっかり観察してみてください。
そうすれば、自然と対応は変わってくると思います。
しかし、その戦いごっこは本当に子どもがやりたくてやっているのかは見極める必要があります。
子どもの行動にはいつも理由があります。
多くの場合、子どもは戦いごっこがしたのではなく、その場ではそれしか遊びが見つけられないのです。
戦いごっこが頻発する時の自分のクラスの過ごし方をもう一度見直してみてはいかがでしょうか?
私は現在2歳時担任ですが、年度初めは戦いごっこばかりしていた子どもたちは、11月現在の今ではガラリと変わりました。
みんな自分のやりたい遊びを見つけて遊んでいます。
戦いごっこをする子はほとんどいなくなりましたよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
保育が楽しくないなと感じ始めてしまっている人はこちらの記事を読んでみてください。

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