
こんにちは!保育士のサボジローです!
子どもの発達の勉強をしていると三項関係や9ヶ月革命のところで「社会的参照」という言葉が出てきます。
ちょっと難しい響きですね。
しかし、社会的参照は子どもの心の発達の流れを知る上で、とても大事なポイントの一つです。
そこで今回は、社会的参照ってなんだろう?という疑問にお答えしていきます。
社会的参照とは、シンプルに言えば「振り返り」のことですよ!
社会的参照とは
社会的参照とは、
“ 意味の不確かな対象と遭遇した際に生じた不安定な情動状態を,他者が発する情報を活用し,その対象の意味を知る(情報探索)ことによって建て直し(情動調整),さらにはその対象に対する自らの行動を決定・実行する(行動調整)という一連のプ ロセス”
引用元:乳幼児期 における社会的参照の発達的意味 およびその発達プ ロセスに関する理論的検討,
こ そが,社会的参照である
遠藤利彦・小沢哲史,2001
うーん。難しいですね。
もっと簡単に言えば、赤ちゃんが新しいものや不安なものに出会った時、お母さんを振り返り、その表情や態度から「これって大丈夫?」と確認してどうするか決める現象のことです。
お母さんが危険だと言う顔をすれば触りませんし、「大丈夫だよ」と笑顔をであれば触ってみたりもっと近づいてみたりします。
新しいおもちゃ、虫、知らない人、動物、あらゆるものに出会った時、子どもが振り返って確認するかのような顔をすることってありますよね?
あの確認行動が社会的参照です。
ちなみに、この確認のための振り返りのことを「参照視」と言いいます。
社会的参照の実験
社会的参照の実験として最も有名なのは視覚的断崖実験です。
赤ちゃんを高さのある台の上に載せ、その台の一部を透明にして下が透けて見えるようにします。
その透明の足場の向こうにおもちゃなど目標物をおき、透明の足場を渡って取りにいけるか?という実験です。
わかりやすい動画があるのでどうぞ。(英語ですがナレーションは気にせず)
ちなみに、最初のおじさんはエモーション(情動)は子どもにとって重要なコミュニケーション手段で、子どもの学習にとってとても大切だと言うような話をしてます。
動画を見ていると、透明な板の上が安全なのか?渡ることができるのか?表情でお母さんに確認する赤ちゃんの姿がよくわかります。
また、お母さんが笑顔の時は安心して渡っていき、お母さんが「危ない」という表情の時はためらう様子が見られますね。
これがまさに「社会的参照」なのです。
社会的参照は何歳からみられるか?
社会的参照が見られるようになるには、三項関係の成立が欠かせないと言われています。
三項関係とは赤ちゃんとお母さんが一緒に一つのものを見て共感できることです。
三項関係について知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

一般的には三項関係が成立するのが大体生後9ヶ月頃、社会的参照が見られるようになる時期は生後9ヶ月以降、1歳前後と言われています。
生後9ヶ月頃は三項関係が成立し、社会的参照が見られるようになっていくので、「9ヶ月革命」や「9ヶ月の奇跡」などと言われています。
社会的参照はそのくらい発達の中で重要なポイントなのです。
ただし、自閉症の子は社会的参照をあまりしない子も多いです。
本当に1歳で社会的参照は可能なのか?
※この章はかなりマニアックな内容です。読み飛ばして構いません。
一般的には社会的参照は1歳頃から見られると言われています。私も保育学生時代そう習いました。
しかし、本当に1歳の子に社会的参照は可能なのか?という研究者も存在します。
というのも、乳児の内面的な発達を知るための臨床実験が不確定要素を多く含んでいるためです。
例えば、先ほどご紹介した視覚的断崖実験は、社会的参照行動が見られる年齢を確かめるために多く行われています。
その結果社会的参照は、9ヶ月から1歳前後に現れるのではないかと言われています。
この実験の中で社会的参照が見られるかどうかのポイントが、お母さんを振り返る「参照視」が見られるかどうかです。
しかし、この実験中に見られる参照視が「愛着行動」ではないか?という疑問の声もあるのです。
愛着行動についてはこちらの記事を。

赤ちゃんにとって実験の場というのは多くのストレスにさらされるはずです。
知らない場所、知らない多くの大人、見たことのないものの数々。
これら多くの要因から不安になった赤ちゃんが、お母さんを振り返り安心しようとする「愛着行動」と、情報を得ようと振り返る「参照視」とが実験下で区別できていないのでは?というのです。
また、生後9ヶ月の子が自分から本当に「情報を得ようとして参照視している」のか?という疑問もあります。
社会的参照とは、目の前の問題を解決するために、他者の情動から情報を得ようとする行動のことです。
しかし、生後9ヶ月の子は目の前に新しいものが現れた時、その情報を得ようとして振り返っているのでしょうか?
たまたま不安にかられてお母さんを振り返った時に、お母さんの表情からヒントを得て行動しているだけかもしれません。
情報を自分から得ようとして能動的に振り返っているのか?たまたま振り返った結果情報が得られたのか?
ここがはっきりしなければ社会的参照が本当はいつ頃から見られるのかも断定できません。
一説には、自分から情報を得ようとする真の社会的参照が見られるのは、2歳頃だとも言われています。
乳児の内面発達は、実験しようとしても不確定要素が多いので断定することが難しいのですね。
とはいえ、私自身保育士として数多くの赤ちゃんと接してきましたが、実感としては1歳前後で社会的参照は見られるのではないかと思っています。
1歳位になると赤ちゃんは「ねぇこれ大丈夫?」という顔でこちらを振り返ります。
保育の中でこの振り返りを捉えることはとても大切だとされています。
なぜなら、赤ちゃんが好奇心を持って新しい世界に触れようとしている時に、「大丈夫だよ」と背中を押してあげることができるからです。
社会的参照はなぜ重要か?

赤ちゃんは全く何も知らない状態でこの世界に生まれてきます。
そして、たくさん愛される中で人への基本的な信頼感を持ち、少しずつ世界に興味を持っていきます。
世界に興味を持った赤ちゃんは、膨大な情報の中からどうやって大事なものを選んで学んでいくのでしょう。
まだ言葉をしゃべることはできません。
そんな時に役に立つのが社会的参照なのです。
信頼できる人を振り返り、その人の情動(表情や声)を感じることでそのものがどんな性質のものなのか学んでいきます。
つまり、言葉を獲得する前の赤ちゃんにとって社会的参照はこの未知の世界を渡っていくための羅針盤となるのです。
ヒトは生後1、2年で信じられないほど膨大な量のことを学習していきます。
その人生の初期の大切で大変な学習を助けるために、生まれつきプログラムされたのが社会的参照ではないかと私は考えています。
まとめ
社会的参照とは何かについて解説してきました。
言葉を獲得する前の赤ちゃんが、新しい物事に触れた時近しい人を振り返り、その情動(表情・声色・雰囲気)を頼りにして多くのことを学んでいくのが社会的参照です。
社会的参照は赤ちゃんが不思議に満ちた世界を渡っていくための羅針盤だと言えるでしょう。
だからこそ、赤ちゃんが振り返った時(参照視した時)はしっかり赤ちゃんの意図をキャッチして、優しく答えてあげたいですね。
また、社会的参照には赤ちゃんとの信頼関係がとても大切です。
”信頼できるこの人が笑顔だから大丈夫だ”と安心して挑戦できるようになります。
ですから、まず何よりも赤ちゃんとの信頼関係、「愛着」をしっかり形成していきたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
愛着についてはこちらの記事をどうぞ。

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