「昨日も、3日前もクラスで噛みつきがあって・・・今日もあったらどうしよう。」
そんなふうに頭を悩ませている保育士さんも多いのでは?
保育園での噛みつき。本当に心が痛いし、保護者のことや主任・園長への報告を思うと気が重いですよね・・・。
そこで今回は、保育園での噛みつきは本当に防ぐことができるのか?をテーマに噛みつく理由やその対処法について解説していきます。

クラスで噛みつきがあると本当に辛いよね。
子どもはなぜ噛む?

子どもはなぜ噛むのか?
理由がわかれば対処法も見えてきます。
0歳時に多い理由
0歳時クラスの場合、月齢にもよりますが”ただそこに手があったから”という理由が一番多いです。
0歳時はまだまだ口で色々なものを確かめます
気になるものがあれば、なめたり噛んだりしてみる年齢なのです。
それがたまたま友だちの手であった、ということも大いにありえます。
また、コミュニケーションの一つという可能性もあります。
家庭で子どもが親を噛んで、それを注意されていない場合、子どもにとって噛むのは悪いことではありません。
目の前にいる子と関わってみようと思いガブリとやってみたということもあるのです。
他にも、噛むことで相手が反応するからと言う場合もあります。
この時期の子どもは、自分が力をかけることで反応があることは繰り返しやってみます。
例えば、赤ちゃんの玩具でスイッチを押すと動物が飛び出てくるようものってありますよね?
あれと同じ感覚です。
自分が噛んでみたら相手が泣いたので、もう一度やって反応を確認しているのです。
このように、0歳児の噛みつきはケンカや取り合いが原因ではないことが多いです。
子どもが密集している時は”起きるかも”というつもりを常に持っていましょう。
1、2歳時に多い理由
1、2歳児の噛みつきの原因は、物や場所の取り合いが圧倒的に多いです。
自我の拡大期であるこの時期は、”自分の物”という気持ちも強くなります。
その場所やおもちゃを自分のものだと伝えたい、でも言葉は出ない・・・。
代わりに一番効果的に相手に伝わる噛みつきをするのですね。
しかも、噛みつきは他の事故に比べて、ほんの少しの隙に起きてしまうのが辛いところです。
子ども同士のトラブルを事前に予測し、先回りして動いていく力が保育者には求められます。
幼児の場合
3歳時の低月齢の子はともかく、ほとんどの子が噛むより先に言葉で伝えられるようになっています。
そのため、噛みつくのは言葉がうまく表現できない少し気になる子か、怒りが蓄積されて爆発して噛む大ゲンカのときです。
幼児さんの場合は噛む子が予想しやすいですし、そうでない子が噛むほどのケンカは事前に気づけるので、防ぎやすいのではないでしょうか。
噛みつく子どもの心

噛みつきが起きるとどうしても噛まれた子のこと、その保護者のこと、上司への報告の事が頭をよぎってしまいますよね。
でも、噛み付いた子の心にも注目してあげてほしいと思っています。
噛み付いた子はどんな気持ちだったでしょう。
どうしてもその場所に座りたくて、それを伝えたいけれど伝える手段がない。
だから自分の持っている伝える手段を使ってみただけなのではないでしょうか?
「自分はこうしたかった」という思いを伝える手段が噛みつきしかなかっただけなのです。
もちろん保育園では集団で他人の子どもを預かっているので、噛みついた子はしっかり叱らなくてはいけません。
しかし、その子にも思いがちゃんとあるということ、噛み付いた子の願いもしっかり考えてあげてほしいと思います。
自分の思いをしっかりと認めてもらえた子は噛みつきが少ないといわれています。
もしかすると噛み付いてしまった子には認められてない願いがあるのかもしれませんね。
(噛み付いた子の、保護者の子育てが悪いということではありません。)
噛みつきが起きた時の対処法

噛みつきが起きてしまっても、しっかり対処すれば大丈夫!
クラス内で噛みつきが起きてしまった時は基本的に3つの対応が求められます。
- 噛みつかれた子、噛みついた子への対応
- 噛みつかれたケガの応急処置
- 保護者への対応
ですね。
順番に見ていきましょう。
子どもへの対応
まずは噛まれてしまった子の痛かった気持ちをしっかり受け止めましょう。
当たり前のようですが、意外とないがしろになってしまうところです。
以前働いていたところでこんな保育士がいました。
保育経験で言えば中堅くらいになる保育士です。
クラス内で噛みつきがあり、噛みつきに気がついたその保育士は
「あーやっちゃったねぇ・・・。」と言ってその子どもを水道に連れていき、流水で噛まれた部分を淡々と冷やしながら「保護者に言わなくちゃねぇ、あーあ。」とつぶやいていたのです。
驚きました。
噛まれたことへの応急処置は正しいものでした。
しかし、噛まれた子への「痛かったね、大丈夫だった?」などの声掛けが一言もなかったのです。
1歳時クラスを何度も経験していれば、噛みつきが起こることにある意味慣れてしまうのはわかります。
そうして、その保育士の頭の中はこれからの対応で頭が一杯になっていたのでしょう。
こうして客観的に見ると、とてもひどい保育士のように見えますが、あなたは大丈夫ですか?
噛みつきが起きると「しまった」という気持ちで心が一杯になり、その後の対応で頭が一杯になってしまう気持ちも正直私はわかります。
しかし、噛まれた子は本当に痛いでしょう。びっくりしたでしょう。
もう一度原点に戻り、子どもの痛かった気持ちをしっかり受け止めてあげてほしいです。
また、噛みつかれた原因についても「このおもちゃ〇〇ちゃんが使ってたんだって、取られて嫌だったんだね。」と言葉にして伝えてあげましょう
次に、噛みついた子への対応です。
もちろん、噛みついた事そのものはしっかり叱りましょう。
保育園は集団の場です。他人の子どもを預かる以上子どもが噛みついたことを「まぁいいじゃないか」ではすみません。
再発しないよう、噛みついた子には噛みつくことは悪いということはしっかり伝えましょう。

そのうえで、やはり噛みついた子の気持ちも受け止めてあげましょう。
噛みついた子がなぜ噛みついたのかを探り、「この玩具欲しかったんだね」としっかり気持ちを受け止めてあげましょう。
そのうえで、「欲しかったら貸してって言うんだよ。」と言葉で伝える手段も教えてあげます。
噛みついた子への対応ではどうしても叱るがメインになってしまいがちなので、噛みついた子の気持ちも大切にしてあげたいですね。
噛みつかれた子の応急処置
噛みつかれた子の心のケアはもちろん、ケガの応急処置も正しい知識が求められます。
特に噛みつきは跡が痛々しく残りやすく、噛みつかれた子の親としてはショックを受けるでしょう。
そこで、できる限り跡が残らないように処置しましょう。
年配の保育士さんで、昔ながらのやり方で保育をする人はもしかしたら傷口を揉んで跡を消すという方もいるかも知れません。
間違いなのでやめましょう。
正しい処置は下記の通り。
- 流水で傷口を洗い流す。(噛み傷は口でつけられた傷なのでしっかり衛生的にしましょう。)
- 15〜20分ほど傷口を冷やす。
保冷剤が手軽ですが、氷のうだと傷口の接地面にムラができないのでより効果的に冷やせます。
凍傷にならないように、たまに、子どもの肌に触れ、冷たくなりすぎていないか確認してあげましょう。
「手軽に冷やせる」と冷えピタを貼る園もたまにありますが、冷えピタは炎症を抑えるほどの冷却効果はありません。意味がなく、誤飲などのリスクだけが上がるのでやめましょう。
保護者に見られる前に傷口を消そうと、傷口を揉むなど科学的根拠のとぼしい方法を実践してしまう方がいます。
しかし、噛まれてしまった以上傷口は完全に消えません。
噛まれた事実をもみ消すのでなく、しっかり説明し謝罪することが大切です。
保護者への対応
保護者対応で一番大切なのは、誠実さです。
保育園は子どもを安全に預かることを約束した場です。
いかなる理由があろうとも、子どもを傷つけてしまった場合非は保育者にあります。
その事を忘れずに誠実に対応しましょう。
まず、噛まれてしまった子の保護者には、一番に謝罪をし、状況の説明をしてまた謝罪をしましょう。
ここで、噛まれてしまったことは自分たち保育者の責任であるとしっかり伝えることが大切です。
噛まれた子の保護者の怒りが噛んだ子の保護者へ向かってしまうと、事態はとてもこじれていってしまいます。
しっかり保育園の責任である旨伝えましょう。
また、0歳時や1歳時のまだしゃべれない子の場合は、噛んだ子の名前は伏せておいてもいいでしょう。
あくまで自分たちの責任なので、というスタンスを取ることで保護者どうしのトラブルは避けましょう。
また、当然のことですが、保護者に伝える前に自分の上司・園長へはしっかり報告してください。
園で起きた事故を責任者が知らないということになれば、園全体の信頼が落ちますし、あなたの誠実さが疑われます。
次に、噛んでしまった子の保護者への対応ですが、友だちを噛んでしまったという事実は伝えたほうがいいでしょう。
もちろん噛みつきの事故が起きたことは私たち保育者の責任であるという前提の元、噛んでしまったことは伝えます。
もし頻繁に噛みつく子ならば、何らかの形でそれを保護者が知ることになった時に、知らなかった場合園への不信感となってしまいます。
また、噛みつきの多い子は家庭で何か原因がある場合もあり得ます。
保護者が噛みつきが多いことを気にして相談してくれたら、そこから家庭の様子を探って一緒に考えるきっかけとなっていくでしょう。
あくまで噛んだ子の保護者を責めるのでなく、事実を伝えることだけという意識をお忘れなく。
保育園で噛みつきをゼロにすることは可能か?
今まで散々子どもがケガをしたら保育園の責任、噛みつきは保育者の責任と言ってきました。
ではいい保育者なら噛みつきをゼロにすることは可能なのでしょうか?
私は、現状不可能だと思っています。
もちろん、保育者の意識や工夫で減らすことはできるでしょう。
しかし、現在の基準では1,2歳児は子ども6人に1人の保育者です。
場面の転換時などタイミングによっては10人ほどの子どもを一人で見ていることもあるでしょう。
そんな中どんなに気をつけていてもやはり噛みつきは起きてしまいます。
噛みつく子がわかってくると止めやすくもなりますが、それではゼロにはできませんよね。
私もかなりベテランで知識も豊富な保育者と組んで保育したことありますが、それでも噛みつきは1年度に数回は絶対起きてしまいます。
現状の保育基準では噛みつきをゼロにすることはできないというのが私の考えです。
いっそ、噛みつきに対する対応も保育士の仕事の一部と考えるほうがいいのかもしれません。

もちろん、噛みつきを減らす努力は大切だよ!
保育園での噛みつきを防ぐには?

では噛みつきを減らすにはどうすればいいのでしょう?
以下のことを気をつけると、だいぶ噛みつきを防ぐことができます。
- 子どもを不必要に密集させない。
(子どもが分散するよう玩具の配置、コーナーの配置に気を配る) - 目の届かない狭い場所に子どもが入った場合必ず側につく。
- 噛みつく子、噛まれやすい子が近くにいる時は側につく。
(噛む子、噛まれる子、記録をつけると決まっている場合が多い) - 子どもの行動を常に予想する。
この中でも特に大切なのは子どもの行動を予想することです。
ある意味保育の基本です。
子どもが遊んでいるときも、「遊んでるなぁ」とぼんやり眺めていてはいけません。
その子の行動をしっかり観察し、なぜそうしているのか?次にどうするか?と予測しながら見ましょう。
そうすることで噛みつく前に「あそこはトラブルになりそうだな」と気づくことができます。
また、保育士ならば基本中の基本ですが、常に顔はあげて保育しましょう。
例えば子どもをヒザに乗せて絵本を読んであげているときでも、じっと絵本を見てしまうのではなく、ちょこちょこ顔を上げて他の子が何をしているのか常に視界に入れましょう。
保育士を何年かしていると自然と身につきますが、新人保育士さんにはなかなか難しいことですよね。
しかし、「保育士は後ろにも目をつけなくてはいけない」と言われるほど周りを見ることが大切です。
私としては一人の保育士の負担がそんなにも大きい現状が変わればと思いますが、今現在はそういう職業なのです。
意識的に顔を上げるようにしていきましょう。
まとめ
保育園で噛みつきはゼロにできるのか?
答えはNOです。
現状の保育基準では、どうしても噛みつきは起こってしまいます。
もちろん努力で減らすことはできます。
しかし、ゼロにはできないでしょう。
ですから、これも保育士の仕事の一部と割り切り噛みつきへの対応を学んでいきましょう。
どうしても噛みつきはネガティブに捉えられがちです。
そりゃあ保育者からすれば、上司への説明、保護者への謝罪と嫌な業務が増えますからね。
しかし、噛みつきは子どもの願いから起きるものです。
私が教科書のようにしている、田中真介さんの著書の中に、以下のように書かれています。
自分がやったことを十分に認めてもらった子どもは、”かみつき”が少ないと言われています。
出典:発達がわかれば子どもが見える,p64,田中真介 監修,乳幼児保育研究会 編著,2009年
例えば、子どもが泣いている時に「どうしたの?くやしかったね」などと子ども気持ちに応えてあげる、子どもがボールを投げた時に「わぁ!!上手に投げられるんだね!」などと投げたことにしっかりと応答する、といった具合に大人が子どもの行動に共感し、自我の確認をさせていくことがまず第一になりそうです。
噛み付いた子の願いにもしっかり注目し、その子の願いが別の形で満たされていけば噛みつきは減っていくかもしれませんね。
↑こちらの本は完全に保育士さん向けです。
とても詳しく発達のことが書かれているので、勉強したい方は購入してみてもいいかもしれません。
私は教科書のようによく開いています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
保育士さんならぜひこの記事も読んでみてください。働き方が変わります。







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